LINE ベトナム語 翻訳が崩れない日本語の書き方|建設・製造の現場指示
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技能実習生や特定技能のベトナム人スタッフを受け入れている現場で、翻訳を入れたのに指示が伝わらない、という相談は珍しくありません。原因が翻訳の側にあるとは限りません。日本語の書き方の側にあることが、かなりの割合であります。
日本語とベトナム語は、丁寧さの持ち方が構造から違います。日本語は動詞の形を変えて敬語をつくりますが、ベトナム語にその仕組みはありません。ベトナム語の丁寧さは、相手をどう呼ぶか(anh、chị、em のような人称)と、文末に ạ のような語をつけるかで決まります。つまり、日本語の敬語をどれだけ厚く積んでも、ベトナム語側では敬語として積み上がらず、平たい一文になって届きます。
これは翻訳の失敗ではなく、二つの言語の設計の違いです。だとすれば、打ち手は日本語側にあります。
敬語で丁寧にするほど、指示は弱くなる
日本語の現場では、強い指示を避けるために婉曲な形を使います。「〜していただけると助かります」「できれば〜でお願いします」といった言い方です。日本語話者どうしなら、この形は「丁寧だが、やってほしい」と読めます。
ベトナム語に訳されると、この二層が一層になります。残るのは依頼の内容だけで、「必ずやってほしい」という強さは文の形からは復元できません。読んだ側は、任意の提案として受け取るか、判断がつかずに保留にします。どちらも現場では遅れになります。
逆の事故もあります。日本語で短く言い切った指示は、ベトナム語では素っ気ない命令として届きます。日本語側で丁寧さを足したつもりの部分が消え、削ったつもりのない冷たさだけが残る、という向きです。
対処は単純で、丁寧さと指示の強さを分けて書くことです。強さは文の形ではなく、言葉で書きます。「必ず」「今日中に」「やらなくてよい」を本文に入れてしまえば、どの言語に訳されても残ります。
日本語側で決めておく五つのこと
現場で効いた書き方を五つに絞ると、次のようになります。
- 一文に指示は一つ。二つ以上の依頼が入った長文は、訳したときに前半だけが伝わることがあります。
- 条件を先に書く。「風があるので、午前中だけ散布します」のように、条件を文頭に置きます。日本語は条件を後ろに回せますが、ベトナム語は語順が主語・動詞・目的語で、前から順に読める形のほうが崩れません。
- 主語と対象を省かない。日本語は誰が誰にやるのかを省けます。省いた文は、訳されるときに補われるか、抜け落ちます。「私が」「あなたが」を書くだけで曖昧さが減ります。
- 時刻・場所・数量は数字で書く。「あとで」「上のほう」「少し」は、訳しても曖昧なまま残ります。
- 婉曲な依頼を使わない。「〜してもらえると助かります」は「〜してください」か「〜しなくていいです」に置き換えます。
下は、この書き方で出した朝の指示が、そのままベトナム語で届いている例です。

時刻、階、禁止の範囲がすべて文に書いてあるので、訳された側でも解釈の余地が残りません。
安全に関わる言葉は、言い換えない
現場の日本語には、同じことを指す言い方がいくつもあります。安全に関わる場面では、これが危険になります。
よく知られた例が「上がる」です。「先に上がっていいよ」は、日本語では「先に帰っていい」の意味で使われますが、字面としては「上へ行く」とも読めます。足場の上で作業しているスタッフに向けて使うと、意味が反転して届く可能性があります。
対処は、安全に関わる語を現場で固定してしまうことです。「終業」「退勤」「立入禁止」「停止」「高所」といった語を決め、朝礼でも LINE でも同じ語だけを使います。言い換えの幅を先に潰しておくと、翻訳の側で選択が起きません。
固定する語は多くなくてかまいません。その現場で事故につながる十数語を紙一枚に書き出し、日本語と対応するベトナム語を並べて共有しておけば足ります。新しいスタッフが入るたびに、その一枚を渡します。
声調記号が落ちたベトナム語と、音声メッセージ
ベトナム語はラテン文字で書きますが、文字の上下につく記号が声調と母音の質を表します。この記号が落ちると、別の語になります。ma、má、mà、mả、mã、mạ は、記号を外すとすべて同じ ma です。
現場のスタッフは、手袋のまま、あるいは急いで打つときに、この記号を省いて入力することがあります。日常のやり取りでは前後から読めますが、部品名や数量が混ざった業務連絡では読み違いが起きます。
これを避けやすいのが LINE のボイスメッセージです。打つ必要がないので記号は関係なく、騒音の少ない場所であれば、そのまま送れます。翻訳ボットは音声をいったん文字にしてから訳し、結果はテキストで投稿します。ボットが音声を作って返すことはありません。元のボイスメッセージはトークに残るので、あとから聞き直せます。

なお、騒音の大きい場所では音声の認識精度が落ちます。機械が回っている真横ではなく、少し離れてから録るほうが確実です。写真やスクリーンショットの中の文字は読み取れないので、掲示物を共有したいときは、文字として打ち直すか、声に出してボイスメッセージで送ってもらってください。
この書き起こしには、もう一つ読み取れることがあります。ベトナム語の Anh ơi(年上の男性への呼びかけ)と Em(自分を年下として指す語)が、日本語では「すみません」と「です・ます」に吸収されている点です。ベトナム語側は誰が誰に話しているかを人称で常に示していますが、日本語にはその情報を置く場所がありません。日本語から返すときは、相手の名前を文頭に書いておくと、この情報を補えます。
報連相は、言葉ではなく手順で渡す
報連相は日本の職場の習慣であって、ベトナム語に一語で対応する言い方がありません。訳せば言葉としては出てきますが、何をどこまで誰に伝えるのか、という中身は伝わりません。新人のベトナム人スタッフが報告をしないのは、意図ではなく、基準を渡されていないことが理由である場合があります。
言葉ではなく手順に置き換えます。たとえば次の三つに分解します。
- 何が起きたら:機械が止まった、数量が合わない、けがをした、間に合わない
- 誰に:班長、または不在なら事務所
- いつまでに:気づいた時点ですぐ
この三行を LINE のグループのノートに貼り、母語で読める状態にしておけば、習慣ではなくルールとして運用できます。「報告してください」と抽象的に言うより、「機械が止まったら、すぐ班長に書いてください」と書いたほうが動きます。
LINE グループでの始め方
やり方は難しくありません。翻訳ボットを友だちに追加し、対象のグループに招待したうえで、グループの中で言語を指定します。日本語版の書き方は、言語名を空白で並べる形です。
@Echonora 日本語 ベトナム語
これで日本語とベトナム語が相互に訳されます。一度指定すれば、以降は発言のたびにコマンドを送る必要はありません。三つ以上の言語が混じる現場なら、同じ形で言語名を並べて増やせます。対応している言語名の書き方は対応言語リストで確認できます。
導入の全体像や、翻訳が動かないときの確認順はLINE 翻訳botの仕組みと導入手順にまとめてあります。ベトナム語まわりの運用をまとめて見たい場合はLINE でベトナム語を翻訳する方法が入口です。
まずは一つのグループで試してください。無料のプランがあり、期限はなく、クレジットカードの登録も必要ありません。1日に訳せる件数に上限があるだけです。
よくある質問
指示を短くすると、冷たく感じられませんか。
ベトナム語側では、丁寧さは人称と文末の語で表れます。日本語を短く書いても、訳された文が失礼になるわけではありません。むしろ、条件と期限がはっきりしている文のほうが、読む側の負担は軽くなります。
日本語の敬語をベトナム語の敬語に置き換えてもらうことはできますか。
置き換える先の仕組みが同じ形では存在しないため、一対一の対応はつきません。丁寧さの強弱ではなく、依頼か指示か、いつまでか、を日本語の本文に書いておくのが確実です。
掲示物や書類の写真を送っても訳されますか。
画像やスクリーンショットの中の文字は読み取れません。文字として打ち直すか、内容を声に出してボイスメッセージで送ってもらってください。
やり取りの記録は残りますか。
原文と訳文が同じスレッドに並んで残るので、あとから読み返せます。「あのとき何と言ったか」の確認が、口頭だけの場合より速くなります。データの取り扱いについてはプライバシーポリシーをご覧ください。
まとめ
翻訳を入れる前に、日本語の書き方を決めておくと、届き方が変わります。一文に一指示、条件を先に、主語と対象を省かない、数字で書く、婉曲な依頼を避ける。安全に関わる語は現場で固定する。報連相は言葉ではなく三行の手順で渡す。
そのうえで、書いたものが相手の母語で読める状態にしておく。この二つが揃うと、朝礼で言った内容の確認が数十秒で終わるようになります。
導入や運用の相談はお問い合わせフォームから受け付けています。現場のグループでそのまま始める場合は、下から友だちに追加してください。